Japanische Klassiker mit Furigana
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme
その句は、たしか、
国境も知らず草の実こぼれ合い
というものであった。それで御健在を知ったわけだった。
徴兵検査は浅草区役所でうけた。一家の戸籍もそのとき東京へ持って来た。検査日の当日、徴兵司令官というか、さいごの認定をうける所へ来たら、いかめしき人が、つらつらぼくの裸身と検査表とを見くらべて、
「今日の有為な青年が、そんな弱さで君どうするんか。体重といい身長といい、何たるヘッポコか。しっかり鍛えい」
と、大勢の中で、ぼくを見本において、一場のお説教を垂れた。体重十二貫、丙種であった。
そこでは大いに赤面したが、しかし、この体を、弱虫とは自分では承知しなかった。働くにも、遊ぶにも、何の不便不足はないからである。
そろそろ、遊び始めた。自立してから、今まで知らなかった金が入り始めたせいもある。氷雪の下の青春が陽の目に這い出した恰好でもある。何しろ同年配の遊び友達は揃っていたし、夕方になれば夕風へ泳ぎ出すのが習性になり出した。
大勢の吟友と、柴又の帝釈天へ吟行した帰り途の昼遊びに、俗に吉原では伏見河岸とよばれる辺の安女郎に、ぼくの童貞も、五十銭程度の揚ゲ代で惜しみなく洗礼をうけてしまった。