Japanische Klassiker mit Furigana
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme
種目は思い出せないほど多い。しかしすべては、野放しの童心と、子供相手の駄菓子屋やオモチャ屋との合作に依るもので、社会人の文化的考慮などは、影も映していなかった。道路はどんな大通りでも舗装はなかったし、電灯はまだ家々のものではなかった。馬車道とか海岸通りなどに、青い瓦斯灯の光が見られた頃にすぎない。
遊びの中で、もっとも熱中したのは、メンコ、根ッ木、石鉄砲などだった。ぼくらはメンコの絵によって、源義経だの福島中佐などを知り、また見てもいない団十郎や菊五郎を知っていた。家の近くに法華寺の清正公様のお堂があり、そこのお堂の縁をメンコの道場として夢中になった。紙メンコと鉛メンコとがあったが、紙メンコの裏表に、ロウソクの蝋をこすりつけて磨くと、すばらしい光沢と重厚感が出て来るので、よくお堂の祭壇からロウソクの燃え残りを持って来ては板の間でこすったりした。
メンコの遊び相手に、名は忘れたが、近所の医者の子があった。日が暮れると、このお医者さんは、門の外に立って、山伏みたいに大きな法螺貝を吹き鳴らすのである。この法螺貝の音を聞くと、ぼくのメンコ相手は、すぐ顔色を失って飛んで帰って行った。