Japanische Klassiker mit Furigana
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme
いた。そしてその花形の人、神崎の苦ミ走った容貌と外出の騎馬姿は、お伽話の中の騎士のようにぼくら子供の眼には映じて、ひどく印象的だった。
巌谷小波の“世界お伽噺”を知って、それに読み耽ったのもこの頃からである。ぼくの読書の初めといっていい。博文館の少年世界は、まだ少し難しい感があった。そこへゆくと、小波の世界お伽噺は菊判四号活字で読み易くもあったせいか、すでに何十種も出版されていたが、出ている限りの物はあらまし読んだ。
たしか定価は一部七銭だったと思う。家庭では、そうそう七銭の本は買ってくれないのである。牛島坂の上に、格子作りのしもたやがあって、そこの小母さんが玄関の上がり三畳に書棚をすえ、その世界お伽噺から、金港堂のお伽文庫だの、日本偉人伝だの、イソップ物語だの、子供向きのものばかりをおいて貸本屋をしていた。
貸本のお伽噺は、すべて一冊一銭だった。だが、馴れて来ると、一銭持って一冊借りにゆき、格子の外から歩き歩き読み初める。そして読み終ってしまうと、途中から又、大急ぎで引返して「小母さん、これはもういつか読んだ本だからほかのと取り換えてくんない?」