Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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わすれのこりのき

忘れ残りの記

吉川 英治

Lesen Sie 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 193.050 Zeichen · 383 Bildschirme

Aozora Bunko

ぼくは、わんわん泣き喚きながら二、三十分間も外から障子の内へ謝った。その辺、夢中だったので、よく覚えていないが、やがて、裸足で台所口の方へ廻ってゆき、氷のような足を母の手で拭いてもらった。そして、母と一しょに泣きじゃくりながら、もう一ぺん父の前に坐らせられた。

父がぼくに課したことは、もちろん父の愛情と信じてしていたことであろう。なし易い小愛を超えた父性の大愛とも考えていたにちがいない。今の父親や教育者には理解しがたいものだろうし、現在のぼく自身にも、到底できない。

けれど間違いなく、こういう父性と家庭環境に培われたぼくではある。だから現在のぼくの子供らから、ぼくを見れば、ぼくという父にも多少どこかに祖父的な煙たさがあるかもしれない。ぼく自身は充分、今日という時代反省を経ているつもりではいても、どこかに何かは遺伝しているだろう。しかし、今日の親たちがわが子への、余りな放任ぶりや甘やかしにまかせている風潮にも、いささか疑いがないではない。時には、かつてのきびしい父性に郷愁を感じることが正直否みなく、ぼくにはある。

暴風雨の日曜日だった。

日曜日ではあったが、父はなにかのため、その朝も会社に出かけた。