Japanische Klassiker mit Furigana
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くろかべ
文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁
泉 鏡花
Lesen Sie 文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁 (くろかべ) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 72.070 Zeichen · 143 Bildschirme
小父さんになりましたよ。
乗込んでから、またどうか云う工合で、女たちが二人並ぶか、それを此方から見る、と云った風になると、髪の形ばかりでも、菩提樹か、石榴の花に、女の顔した鳥が、腰掛けた如くに見えて、再び夢心に引入れられもしたのでありましょうけれど、なかなか、そんな事を云っていられる混雑方ではなかったのです。
折からの日曜で、海岸へ一日がえりが、群り掛る勢だから、汽車の中は、さながら野天の蒸風呂へ、衣服を着て浸ったようなありさまで。……それでも、当初乗った時は、一つ二つ、席の空いたのがありました。クションは、あの二人ずつ腰を掛ける誂ので、私は肥満した大柄の、洋服着た紳士の傍、内側へ、どうやら腰が掛けられました。ちょうど、椅子を開いて向合に一つ空席がありましたので、推されながら、この真中ほどへ来た女たちが、
(姉さん。)
(まあ、お前さん。)
と譲合いながら、その円髷の方が、とに角、其処へ掛けようとすると、
(一人居るんです。)と言った、一人居た、茶と鼠の合の子の、麻らしい……詰襟の洋服を着た、痩せたが、骨組のしっかりした、浅黒い男が、席を片腕で叩くのです。