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Japanische Klassiker mit Furigana

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くろかべ

文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁

泉 鏡花

Lesen Sie 文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁 (くろかべ) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 72.070 Zeichen · 143 Bildschirme

Aozora Bunko

菊あわせ

「蟹です、あのすくすくと刺のある。……あれは、東京では、まだ珍らしいのですが、魚市をあるいていて、鮒、鰡など、潟魚をぴちゃぴちゃ刎ねさせながら売っているのと、おし合って……その茨蟹が薄暮方の焚火のように目についたものですから、つれの婦ども、家内と、もう一人、親類の娘をつれております。――ご挨拶をさせますのですが。」

画工、穂坂一車氏は、軽く膝の上に手をおいた。巻莨を火鉢にさして、

「帰りがけの些細な土産ものやなにか、一寸用達しに出掛けておりますので、失礼を。その娘の如きは、景色より、見物より、蟹を啖わんがために、遠路くッついて参りましたようなもので。」

「仕合せな蟹でありますな。」

五十六七にもなろう、人品のいい、もの柔かな、出家容の一客が、火鉢に手を重ねながら、髯のない口許に、ニコリとした。

「食われて蟹が嬉しがりそうな別嬪ではありませんが、何しろ、毎日のように、昼ばたごから――この旅宿の料理番に直接談判で蟹を食ります。いつも脚のすっとした、ご存じの楚蟹の方ですから、何でも茨を買って帰って――時々話して聞かせます――一寸幅の、ブツ切で、雪間の紅梅という身どころを噛ろうと、家内と徒党をして買ったのですが、年長者に対する礼だか、離すまいという喰心坊だか、分りません。