Japanische Klassiker mit Furigana
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くろかべ
文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁
泉 鏡花
Lesen Sie 文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁 (くろかべ) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 72.070 Zeichen · 143 Bildschirme
と思うと、引緊めるような、柔かな母の両の手が強く民也の背に掛った。既に膝に乗って、噛り着いていた小児は、それなり、薄青い襟を分けて、真白な胸の中へ、頬も口も揉込むと、恍惚となって、もう一度、ひょいと母親の腹の内へ安置され終んぬで、トもんどりを打って手足を一つに縮めた処は、滝を分けて、すとんと別の国へ出た趣がある、……そして、透通る胸の、暖かな、鮮血の美しさ。真紅の花の咲満ちた、雲の白い花園に、朗らかな月の映るよ、とその浴衣の色を見たのであった。
が、その時までの可恐しさ。――
「常さん、今君が蔀を開けて、何かが覗いたって、僕は潜込む懐中がないんだもの……」
簫の窓から覗いた客は、何も見えなかった、と云いながら、真蒼になっていた。
その夜から、筋向うのその土蔵附の二階家に、一人気が違った婦があったのである。
寂寞と霰が止む。
民也は、ふと我に返ったようになって、
「去年、母さんがなくなったからね……」
火桶の面を背けると、机に降込んだ霞があった。
じゅうと火の中にも溶けた音。
「勉強しようね、僕は父さんがないんだよ。さあ、」
鮒が兜を着ると云う。……
「八田潟の処を読もう。