Japanische Klassiker mit Furigana
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くろかべ
文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁
泉 鏡花
Lesen Sie 文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁 (くろかべ) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 72.070 Zeichen · 143 Bildschirme
」と下向の橋を渡りながら言った、――「洒落てるわねえ」では困る、罪障の深い女性は、ここに至ってもこれを聞いても尼にもならない。
どころでない、宿へ皈ると、晩餉の卓子台もやい、一銚子の相伴、二つ三つで、赤くなって、ああ紅木瓜になった、と頬辺を圧えながら、山鳥の旦那様はいい男か知ら。いや、尼処か、このくらい悟り得ない事はない。「お日和で、坊さんはお友だちでよかったけれど、番傘はお茶を引きましたわ。」と言った。
出掛けに、実は春の末だが、そちこち梅雨入模様で、時々気まぐれに、白い雲が薄墨の影を流してばらばらと掛る。其処で自動車の中へ番傘を二本まで、奥の院御参詣結縁のため、「御縁日だとこの下で飴を売る奴だね、」「へへへ、お土産をどうぞ。」と世馴れた番頭が真新しい油もまだ白いのを、ばりばりと綴枠をはずして入れた。
贅沢を云っては悪いが、この暖さと、長閑さの真中には一降り来たらばと思った。路近い農家の背戸に牡丹の緋に咲いて蕋の香に黄色い雲の色を湛えたのに、舞う蝶の羽袖のびの影が、仏前に捧ぐる妙なる白い手に見える。遠方の小さい幽な茅屋を包んだ一むら竹の奥深く、山はその麓なりに咲込んだ映山紅に且つ半ば濃い陽炎のかかったのも里親しき護摩の燃ゆる姿であった。