Japanische Klassiker mit Furigana
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くろかべ
文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁
泉 鏡花
Lesen Sie 文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁 (くろかべ) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 72.070 Zeichen · 143 Bildschirme
――衝き進むエンジンの音に鳴留んだけれども、真上に突出た山の端に、ふアッふアッと、山臥がうつむけに息を吹掛けるような梟の声を聞くと、女連は真暗な奥在所へ入るのを可厭がった。元来宿を出る時この二人は温泉街の夜店飾りの濡灯色と、一寸野道で途絶えても殆ど町続きに斉しい停車場あたりの靄の燈を望んだのを、番傘を敲かぬばかり糸七が反対に、もの寂しいいろはの碑を、辿ったのであったから。
それでは、もう一方奥へ入ってからその土橋に向うとすると、余程の畷を抜けなければ、車を返す足場がない。
三宝ヶ辻で下りたのである。
「あら、こんな処で。」
「番傘の情人に逢わせるんだよ。」
「情人ッて? 番傘の。」
「蛙だよ、いい声で一面に鳴いてるじゃあないか。」
「まあ、風流。」
さ、さ、その風流と言われるのが可厭さに、番傘を道具に使った。第一、雨の中に、立った形は、うしろの山際に柳はないが、小野道風何とか硯を悪く趣向にしたちんどん屋の稽古をすると思われては、いいようは些とぞんざいだが……ごめんを被って……癪に障る。
糸七は小児のうちから、妙に、見ることも、聞くことも、ぞっこん蛙といえば好きなのである。