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Japanische Klassiker mit Furigana

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くろかべ

文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁

泉 鏡花

Lesen Sie 文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁 (くろかべ) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 72.070 Zeichen · 143 Bildschirme

Aozora Bunko

曇りにかかわらない。況や待望の雨となると、長屋近間の茗荷畠や、水車なんぞでは気分が出ないとまだ古のままだった番町へのして清水谷へ入り擬宝珠のついた弁慶橋で、一振柳を胸にたぐって、ギクリとなって……ああ、逢いたい。顔が見たい。

こたまだ、こたまだ

こたまだ……

その辺の蛙の声が、皆こたまだ、こたまだ、と鳴くというのである。

唯、糸七の遠い雪国のその小提灯の幽霊のう場所が小玉小路、断然話によそえて拵えたのではない、とすると、蛙に因んで顕著なる奇遇である。かたり草、言の花は、蝶、鳥の翼、嘴には限らない、その種子は、地を飛び、空をめぐって、いつその実を結ぼうも知れないのである、――これなども、道芝、仇花の露にも過ぎない、実を結ぶまではなくても、幽な葉を装い儚い色を彩っている、ただしそれにさえ少からぬ時を経た。

明けていうと、活東のその柳橋の番傘を随筆に撰んだ時は、――それ以前、糸七が小玉小路で蛙の声を聞いてから、ものの三十年あまりを経ていたが、胸の何処に潜み、心の何処にかくれたか、翼なく嘴なく、色なく影なき話の種子は、小机からも、硯からも、その形を顕わさなかった、まるで消えたように忘れていた。