Japanische Klassiker mit Furigana
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くろかべ
文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁
泉 鏡花
Lesen Sie 文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁 (くろかべ) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 72.070 Zeichen · 143 Bildschirme
その水が、川であったか、海であったか、また、湖であったか、私は、今それをここでハッキリ云うことが出来ない。兎に角、水の上であった。
私の傍には沢山の人々が居た。その人々を相手に、母はさまざまのことを喋っていた。私は、母の膝に抱かれていたが、母の唇が動くのを、物珍らしそうに凝っと見ていた。その時、私は、母の乳房を右の指にて摘んで、ちょうど、子供が耳に珍らしい何事かを聞いた時、目に珍らしい何事かを見た時、今迄貪っていた母の乳房を離して、その澄んだ瞳を上げて、それが何物であるかを究めようとする時のような様子をしていたように思う。
その人々の中に、一人の年の若い美しい女の居たことを、私はその時偶と見出した。そして、珍らしいものを求める私の心は、その、自分の目に見慣れない女の姿を、照れたり、含恥んだりする心がなく、正直に見詰めた。
女は、その時は分らなかったけれども、今思ってみると、十七ぐらいであったと思う。如何にも色の白かったこと、眉が三日月形に細く整って、二重瞼の目が如何にも涼しい、面長な、鼻の高い、瓜実顔であったことを覚えている。
今、思い出して見ても、確かに美人であったと信ずる。