Japanische Klassiker mit Furigana
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くろかべ
文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁
泉 鏡花
Lesen Sie 文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁 (くろかべ) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 72.070 Zeichen · 143 Bildschirme
障子外の縁を何処までも一直線に突当って、直角に折れ曲って、また片側を戻って、廊下通りをまたその縁へ出て一廻り……廻ると云うと円味があります、ゆきあたり、ぎくり、ぎゅうぎゅう、ぐいぐいと行ったり、来たり。朝掃除のうち、雨のざんざぶり。夜、女中が片づけものして、床を取ってくれる間、いい散歩で、大好きです。また全館のうち、帳場なり、客室なり、湯殿なり、このくらい、辞儀、斟酌のいらない、無人の境はないでしょう。
が、実は、申されたわけではありませんけれども、そんならといって、瀬の音に、夜寝られぬ、苦しい真夜中に其処を廻り得るか、というと、どういたして……東から南へ真直の一縁だって、いい年をしながら、不気味で足が出ないのです。
峰の、寺の、暮六つの鐘が鳴りはじめた黄昏です。樹立を透かした、屋根あかりに、安時計のセコンドを熟と視る……カーン、十九秒。立停まったり、ゆっくり歩行いたり、十九秒、カーン。行ったり、来たり、カーン。添水ばかり。水の音も途絶えました。
欄干に一枚かかった、朱葉も翻らず、目の前の屋根に敷いた、大欅の落葉も、ハラリとも動かぬのに、向う峰の山颪が颯ときこえる、カーンと、添水が幽に鳴ると、スラリと、絹摺れの音がしました。