Japanische Klassiker mit Furigana
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くろかべ
文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁
泉 鏡花
Lesen Sie 文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁 (くろかべ) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 72.070 Zeichen · 143 Bildschirme
名剣神社の拝殿には、紅の袴の、お巫子が二人、かよいをして、歌の会があった。
社務所で、神職たちが、三人、口を揃えて、
「大先生。」――
この同音は、一車を瞠若たらしめた。
「大先生は、急に思立ったとありまして……ええ、黒姫山へ――もみじを見に。」――
「あら、おじさん。」
娘の手が、もう届く。……外套の袖を振切って、いか凧が切れたように、穂坂は、すとんと深更の停車場に下りた。急行列車が、その黒姫山の麓の古駅について、まさに発車しようとした時である。
その手が、燗をつけてくれた魔法瓶、さかなにとて、膳のをへずった女房の胡桃にも、且つ心を取られた、一所にたべようと、今しがた買った姫上川の鮎の熟鮓にも、恥ずべし、涙ぐましい思をしつつ、その谿谷をもみじの中へ入って行く、残ンの桔梗と、うら寂しい刈萱のような、二人の姿の、窓あかりに、暗くせまったのを見つつ、乗放して下りた、おなじ処に、しばらく、とぼんと踞んでいた。
しかし、峰を攀じ、谷を越えて、大宗参の菊細工を見ることが出来たら、或は、絵のよい題材を得ようも知れない。