Japanische Klassiker mit Furigana
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しん・へいけものがたり
新・平家物語
吉川 英治
Lesen Sie 新・平家物語 (しん・へいけものがたり) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 123.012 Zeichen · 245 Bildschirme
若党の平六でも走らせればよい』
『買い食いなどさせたら、あとで母上に、どんなにしかられるかしれません』
『かまわぬ。おれがさせるのだ』
『いくら、兄者人の、おことばでも』
『ばか。総領だぞ、この平太は、――おれのいいつけも、すこしはきけい。きいても、いいんだぞ』
弟のひざへ、銭を投げて、清盛の足音は、どすん、どすん、縁を踏み渡って行った。厨にちかい井戸屋根の下に立ち、くみあげた水を、がぼがぼと飲む。そして、顔を洗い、その顔を、布直垂のきたないそでで、こすりこすり、庭をななめに歩いて行った。
父のいる一棟は、荒れ御堂といってもよい。枯れ野みたいな庭の向こうにあった。清盛は、そこの破れ縁を上がった。そして、蔀の蔭から、おそるおそる中へすべり込んだ。
『ゆうべは、おそくなって、すみませんでした。お使いは、いたして参りました』
チラと、かれの影がさしたとたんに、ここの座にいた三人の沈黙は、すぐそれぞれの眼となって、かれの方へ向けられた。
――中でひとり、木工助だけは、急いで、眼をふせてしまった。清盛もまた、かれの姿から眼をそらした。ここで相見るに堪えない気もちが、ふと、ふたりの胸をかすめたのだった。