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Japanische Klassiker mit Furigana

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しん・へいけものがたり

新・平家物語

吉川 英治

Lesen Sie 新・平家物語 (しん・へいけものがたり) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 123.012 Zeichen · 245 Bildschirme

Aozora Bunko

夜来風雨急

いまはもう、こう、手をついて、おれは頼む』

さっきから、厩の蔭での声であった。しかし、それが止むと、水洟をすするのがもれるだけで、木工助家貞の声とては、一言も聞こえなかった。――すでに、軒ばの梅のほのかな気はいに、東の雲のゆるぎが感じられ、一しきり、夜明けの寒さが、ひしと、ふたりの骨をかんでいた。

夜来風雨急

うつ向いたまま、化石したかのような木工助家貞と。そのかれを、にらみつめている清盛と。――ふたりは、鳥肌になっていた。暁の地の冷えに反して、相互の血は、その皮膚の下で、たぎりあっていた。

『申しまする。どうしても、いえとの仰せならば、申しまする。……が、しばらく、心を調えてから、申しまする』

――やがて、木工助は、苦汁を吐くように、そう答えた。いや、うめいたといったほうがよい。それほど、語るには苦しい事情でもあるらしい。

が、その木工助を、清盛が責めてやまないのも、無理はなかった。たしかに、かれは、清盛が生まれた年の――二十年前の――暗い祇園の夜時雨の中で起こったある一事件を、その眼で見ていたはずの人間である。

当夜、主人忠盛とともに、上皇のお微行に扈従して、偶然、そのときに居合わせた者なのだ。