Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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はたもとたいくつおとこ

旗本退屈男

佐々木 味津三

Lesen Sie 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) von 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 240.656 Zeichen · 478 Bildschirme

Aozora Bunko

どうもよくない。極め付きのあの退屈が、にょきりにょきりと次第に鎌首を抬げ出して来たのです。何しろ世間は泰平すぎるし、腕はあっても出世は出来ず、天下を狙いたいにも天下の空はないし、戦争をしたくも戦争は起らず、せめて女にでもぞっこん打ち込む事が出来ればまだいいが、生憎と粋も甘いも分りすぎているし――そうして、そういう風な千二百石取り直参お旗本の金箔つきな身分がさせる退屈ですから、いざ鎌首を抬げ出したとなると、知らぬ他国の旅だけに、わびしいのです。あの旅情――ひとり旅の旅びとのみが知るはかなくも物悲しいあの旅情もいくらか手伝って、ふと思いついたのが島原見物でした。江戸にいた頃は、雪が降ろうと風が吹こうと、ひと夜とて吉原ぞめきを欠かしたことのない退屈男です。思い立ったとなると、その場に編笠深く面をかくして、白柄細身をずっしり長く落して差しながら、茶献上の博多は旗本結び、曲輪手前の女鹿坂にさしかかったのは、丁度頃の夕まぐれでした。

「お寄りやす。お掛けやす――ま! すいたらしい御侍様じゃこと。サイコロもございます。碁盤もございます。忍びの部屋もございます。お寄りやす。