Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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はたもとたいくつおとこ

旗本退屈男

佐々木 味津三

Lesen Sie 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) von 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 240.656 Zeichen · 478 Bildschirme

Aozora Bunko

よいよい、然らば女難でも構わぬゆえ観て貰おう。どうじゃ、身共の人相に惚れそうな女子があるか」

「………」

「喃! おやじ! なぜ返事を致さぬ! 黙っているは女難も分らぬと申すか!」

だが、老いたる観相家は、奇怪なことにもきょとんとしたまま、一向に返事をしなかったので、不審に思いながらよくよく見ると、返事のなかったのも無理からぬ事です。見台の端の建札に小さく、次のような人を喰った文字が書かれてあるのでした。

「唖ニ候エバ、御筆問下サレ度、陰陽四十八占、何ナリト筆答致ベク候。

阿部流易断総本家。――一珍斎」

「わはははは。左様か左様か。唖じゃと申すか。犬も歩けば棒にあたるとはこれじゃな。面白い面白い、ずんと面白い。然らば、筆問してつかわすぞ」

主水之介は、とみにほがらかになりながら、早速筆をとって書きしたためました。

「退屈ノ折カラナレバ対手欲シ。

剣難アリヤ。

女難アリヤ。

神妙ニ返答スベシ」

差し出した紙片を受取りながら、老いたる白髯の観相家は、自ら阿部流と誇称する通り、あたかも阿部の晴明の再来ででもあるかのごとく、いとも厳粛に威容を取り繕って、気取りに気取りながら、筮竹算木をつまぐりはじいていましたが、やがて勿体らしく書きしたためた筆答が、また少なからず人を喰ったものばかりでした。