Japanische Klassiker mit Furigana
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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Lesen Sie 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) von 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 240.656 Zeichen · 478 Bildschirme
刀に物を言わせようとは、元より退屈男の望むところです。悠然と片手をふところにして、おちつき払いながら促しました。
「では、因縁をつけてつかわそうぞ。なれども、尊公ひとりでは物足りぬ。ゆっくり楽しみたいゆえ、あちらのお三人衆にも手伝うて貰うたらどうじゃ」
「なにッ」
「何だと!」
「ほざいたな!」
「よしッ。それほど斬られたくば、痛い目に会わせてやろう! 出い、出い! 前へ出い!」
風雲の急を知ったとみえて、残っていた三人の取り巻侍達も、口々に怒号しながら詰めよると、一斉に気色ばんで鯉口をくつろげました。
「せくでない!」
だが、退屈男は憎い程にも自若としたままでした。
「せくでない。せくでない。ならばあしらってつかわそうぞ。しかし、念のためじゃ。見せてつかわすものがある。とくと拝見いたせよ」
静かに制しながら、のっそりと四人の前に近づくと、おもむろに編笠をとりのけました。と同時に現れた面のすばらしさ! 今にして愈々青く凄然として冴えまさったその面には、あの月の輪型の疵痕が、無言の威嚇を示しながらくっきりと深く浮き上がって、凄艶と言うよりむしろそれは美観でした。