Japanische Klassiker mit Furigana
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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Lesen Sie 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) von 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 240.656 Zeichen · 478 Bildschirme
「はてな、三公、ちょッとおかしいぜ」
「そうよな。変だね。女の足なんだからな、こんなに早え筈あねえんだが、どこへ消えちまったんだろうね」
いぶかりながら馬子達が首をひねっているとき、霧を押し分けて坂をこちらへ、そわそわしながら小急ぎに降りて来た若い身延詣での町人がありました。しかも、そのそわそわしている容子というものが実に奇怪でした。うろうろしながら懐中を探ったかと思うとしきりに首をかしげ、かしげたかと思うとまた嗅ぐようにきょときょと道をのぞきながら、必死と何かを探し探しおりて来るのです。いや、おりて来たばかりではない。ばったり道の真中で退屈男達一行に打つかると、青ざめて言いました。
「あのうもし、つかぬ事をお尋ねいたしますが、旦那様方はどちらからお越しなすったんでございましょうか」
「背中の向いている方から参ったのよ。何じゃ」
「財布でごぜえます、もしや道でお拾いにはならなかったでござんしょうかしら?……」
「知らぬぞ。いかが致したのじゃ」
「落したのか掏摸れましたのか、さっぱり分らないのでござります。今朝早く南部の郷の宿を立ちました時は、確かに五十両、ふところにありましたんですけれど、今しがたお山へ参りまして、御寄進に就こうと致しましたら、いつのまにやら紛失していたのでござります」