Japanische Klassiker mit Furigana
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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Lesen Sie 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) von 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 240.656 Zeichen · 478 Bildschirme
焼けて骨ばかりになったのが、もう一つ棒鼻の先に掛かっているところを見ると、出先でその新しい方を借りてでも来たらしく思われますが、奇態なことにその提灯の紋所が、大名屋敷や武家屋敷なぞに見られる紋とはあまりにも縁の遠い、丸に丁と言う文字を染めぬいた、ひどく艶めかしい紋でした。造りも亦朱骨造りのいとも粋な提灯でしたから、どうも見たような、と思って考えているその胸の中に、はしなくもちかりと閃めき上がったものは、退屈男が丸三年さ迷って、見覚えるともなく見覚えておいた曲輪五町街の、往来途上なぞでよく目にかけた太夫花魁共の紋提灯です。
「道理で粋じゃと思うたわい。暇があらば人間、色街にも出入りしておくものじゃな」
呟いていたかと見えましたが、間をおかないで鋭い質問の矢が飛びました。
「その駕籠は、誰をどこへ連れ参った帰り駕籠じゃ」
「これは、その、何でござります……」
陸尺共が言いもよったのを御門番の番士が慌てながら引き取って言いました。
「お上屋敷へ急に御用が出来ましたゆえ、御愛妾のお杉の方様が今しがた御召しに成られての帰りでござります」
「なに? では、当下屋敷には御愛妾がいられたと申すか」