Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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はたもとたいくつおとこ

旗本退屈男

佐々木 味津三

Lesen Sie 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) von 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 240.656 Zeichen · 478 Bildschirme

Aozora Bunko

「こりゃ、七平、七平!」

「へえい――御用でござりましたか」

「その辺の原っぱにでも参らば、どこぞに、野良犬かどら猫がいるであろう。御馳走してつかわす品があるゆえ、早速曳いて参れ」

すぐに走り出していった様子でしたが、程経て下僕が、一匹の見るからに剽悍無比などら猫を曳いて帰ったので、退屈男は手ずからそれなる不審の鯛をとりあげると、笹折ごとに投げ与えました。飢えたるところへ、好物の生魚がやにわと降って来たので、何条野良猫に躊躇があろう! 野蛮な唸り声を発しつつ、がぶりと勇壮に噛みつくと、見る見るうちに目の下一尺もあろうと思われる品を平らげてしまいました。

然るにいささかこれが奇態です。黒血を吐き垂らしている工合といい、贈り主の気にかかる男であった点といい、もしや何ぞ不届きな仕組みでもありはしないかと思われたればこそ試食もさせたのに、予想を裏切って野良猫は、ぺろぺろとおいしそうに頂戴してしまうと、至って堪能した顔つきをしながら、一向に平然として立ち去ろうとしたので、はて疑ぐりすぎたかなと思いながら、いぶかしんで見詰めていると、だが――その二瞬とたたない途端です。