Japanische Klassiker mit Furigana
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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Lesen Sie 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) von 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 240.656 Zeichen · 478 Bildschirme
でした。美人現るると見ると、色めき立ちつつ、一斉に気負い出したので、早くもそれと推定がついたもののごとく、微笑をみせたのは退屈男です。
「ほほう、ちとこれは面白うなったかな。御酔狂な犬公方様の事ゆえ、あれなる美形に何ぞ謎がかかっているかも知れぬぞ」
呟いたとき――、ドドンと打ち鳴らされたものは、馬首揃えろ! の締め太鼓です。つづいてドンと一つ、大きく鳴るや一緒で、おお見よ!――四つの馬は、鞍上人なく、鞍下に馬なく、青葉ゆらぐ台町馬場の芝草燃ゆる大馬場を、投げ出された黒白取り取りの鞠のように駈け出しました。
第一周は優劣なし!
第二周目も亦同じ。
しかし、第三周目に及んだとき、断然八条流の黒住団七と、大坪流の古高新兵衛の両頭が、三馬身ずつあとの二人を抜きました。つづいて第四周目に及んだとき、さらに両名は二馬身ずつうしろの二人を抜いて、黒白両頭の名馬は、一進一退馬首を前後させながら、次第に第五周目の決勝点に迫りつつあったので、大坪流の古高勝名乗りをうけるか、八条流の黒住勝つか、場内の者等しく手に汗を握ったとき! ――だが、突如としてここに、予想だにもしなかった呪うべき椿事が勃発したのです。