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Japanische Klassiker mit Furigana

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にちりん

日輪・春は馬車に乗って 他八篇

横光 利一

Lesen Sie 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.787 Zeichen · 177 Bildschirme

Aozora Bunko

灸は女の子が笑えば笑うほど転がることに夢中になった。顔が赤く熱して来た。

「エヘエヘエヘエヘ。」

いつまでも続く女の子の笑い声を聞いていると、灸はもう止まることが出来なかった。笑い声に煽られるように廊下の端まで転がって来ると階段があった。しかし、彼にはもう油がのっていた。彼はまた逆様になってその段々を降り出した。裾がまくれて白い小さな尻が、「ワン、ワン。」と吠えながら少しずつ下がっていった。

「エヘエヘエヘエヘ。」

女の子は腹を波打たして笑い出した。二、三段ほど下りたときであった。突然、灸の尻は撃たれた鳥のように階段の下まで転った。

「エヘエヘエヘエヘ。」

階段の上では、女の子は一層高く笑って面白がった。

「エヘエヘエヘエヘ。」

物音を聞きつけて灸の母は馳けて来た。

「どうしたの、どうしたの。」

母は灸を抱き上げて揺ってみた。灸の顔は揺られながら青くなってべたりと母親の胸へついた。

「痛いか、どこが痛いの。」

灸は眼を閉じたまま黙っていた。

母は灸を抱いて直ぐ近所の医者の所へ馳けつけた。医者は灸の顔を見ると、「アッ。」と低く声を上げた。灸は死んでいた。

その翌日もまた雨は朝から降っていた。