Japanische Klassiker mit Furigana
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にちりん
日輪・春は馬車に乗って 他八篇
横光 利一
Lesen Sie 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.787 Zeichen · 177 Bildschirme
そうして、水平線は遙か一髪の光った毛のように月に向って膨らみながら花壇の上で浮いていた。
こういうとき、彼は絶えず火を消して眠っている病舎の方を振り返るのが癖である。すると彼の頭の中には、無数の肺臓が、花の中で腐りかかった黒い菌のように転がっている所が浮んで来る。恐らくその無数の腐りかかった肺臓は、低い街々の陽のあたらぬ屋根裏や塵埃溜や、それともまたは、歯車の噛み合う機械や飲食店の積み重なった器物の中へ、胞子を無数に撒きながら、この丘の花園の中へ寄り集って来たものに相違ない。しかし、これらの憐れにも死に逝く肺臓の穴を防ぎとめ、再び生き生きと活動させて巷の中へ送り出すここの花園の院長は、もとは、彼の助けているその無数の腐りかかった肺臓のように、死を宣告された腐った肺臓を持っていた。一の傷ついた肺臓が、自身の回復した喜びとして、その回復期の続く限り、無数の傷ついた肺臓を助けて行く。これが、この花園の中で呼吸している肺臓の特種な運動の体系であった。
五
ここの花園の中では、新鮮な空気と日光と愛と豊富な食物と安眠とが最も必要とされていた。ここでは夜と雲とが現われない限り、病舎に影を投げかけるものは屋根だけだった。