Japanische Klassiker mit Furigana
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にちりん
日輪・春は馬車に乗って 他八篇
横光 利一
Lesen Sie 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.787 Zeichen · 177 Bildschirme
それは兵部の宿禰の命を受けた訶和郎の妹の香取であった。彼女は美しく装いを凝した淡竹色の裳裾を曳きながら、泉の傍へ近寄って水を汲んだ。彼女の肩から辷り落ちた一束の黒髪は、差し延べた白い片腕に絡まりながら、太陽の光りを受けた明るい泉の水面へ拡った。長羅は馬の手綱を握ったまま彼女の姿を眺めていた。彼女は汲み上げた水壺の水を長羅の馬の前へ静に置くと、赧らめた顔を俯向けて、垂れ下った柳の糸を胸の上で結び始めた。
やがて、馬は水甕の中から頭を上げた。
「奴国の宮で、もっとも美しき者は爾である。」と長羅はいうと、馬の上へ飛び乗った。
香取の一層赧らんだ気高い顔は柳の糸で隠された。馬は再び王宮の方へ馳けて行った。
しかし、長羅は武器庫の前まで来たときに、三人の兵士が水壺の中へ毒空木の汁を搾っているのを眼にとめた。
「爾の汁は?」と長羅は馬の上から彼らに訊いた。
「矢鏃に塗って、不弥の者を我らは攻める。」と彼らの一人は彼に答えた。
長羅の眼には、その矢を受けて倒れている卑弥呼の姿が浮び上った。彼は鞭を振り上げて馬の上から飛び降りた。兵士たちは跪拝いた。
「王子よ、赦せ、我らの毒は、直ちに一人を殺すであろう。