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Japanische Klassiker mit Furigana

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にちりん

日輪・春は馬車に乗って 他八篇

横光 利一

Lesen Sie 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.787 Zeichen · 177 Bildschirme

Aozora Bunko

その時、玉簾の後に今まで身を潜めていた訶和郎は、八尋殿の廻廊から洩れくる松明の光に照されて、突然に浮き出た不弥の女の顔を目にとめた。

「姫よ、待て。」

と訶和郎はいうと、広間の中へ飛び込もうとしていたその身を屈して彼女を横に抱き上げた。そうして、彼は宮殿の庭に飛び下り、厩の前へ馳けて行くと、卑弥呼の耳に口を寄せて囁いた。

「姫よ、我と共に奴国を逃げよ。王子の長羅は、我と爾の敵である。爾を奪わば彼は我を殺すであろう。」

一頭の栗毛に鞭が上った。馬は闇から闇へ二人を乗せて、奴国の宮を蹴り捨てた。

長羅は蒸被の前へ追いつめた宿禰の肩を斬り下げた。そうして、剣を引くと、「卑弥呼、卑弥呼。」と呼びながら、部屋の中を馳け廻り、布被を引き開けた。玉簾を跳ね上げた。庭園へ飛び下りて、萩の葉叢を薙ぎ倒しつつ広場の方へ馳けて来た。

「不弥の女は何処へ行った。捜せ。不弥の女を捕えたものは宿禰にするぞ。」

再び庭に積まれた松明の小山は、馳け集った兵士たちの鉾尖に突き刺されて崩された。そうして、奴国の宮を、吹かれた火の子のように八方へ飛び散ると、次第に疎に拡りながら動揺めいた。