Japanische Klassiker mit Furigana
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にちりん
日輪・春は馬車に乗って 他八篇
横光 利一
Lesen Sie 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.787 Zeichen · 177 Bildschirme
」卑弥呼は王の傍へ馳け寄った。反絵は藤蔓で巻かれた訶和郎の身体を一本の蜜柑の枝へ吊り下げた。卑弥呼は王の傍から訶和郎の下へ馳け寄った。
「彼を赦せ、彼は我の夫、彼を赦せ。」
反絵は卑弥呼を抱きとめると、兵士たちの方を振り返って彼らにいった。
「不弥の女を連れよ。山を下れ。」
一団の兵士は卑弥呼の傍へ押し寄せて来た。と、見る間に、彼女の身体は数人の兵士たちの頭の上へ浮き上り、跳ねながら、蜜柑の枝の下から裾の方へ下っていった。
訶和郎は垂れ下ったまま蜜柑の枝に足を突っ張って、遠くへ荷負われてゆく卑弥呼の姿を睥んでいた。兵士たちの松明は、谷間から煙のように流れて来た夜霧の中を揺れていった。
「妻を返せ。妻を返せ。」
蜜柑の枝は、訶和郎の唇から柘榴の粒果のような血が滴る度ごとに、遠ざかる松明の光りの方へ揺らめいた。その時、兵士たちの群から放れて、ひとり山腹へ引き返して来た武将があった。それはかの君長の弟の反絵であった。彼は芒の中に立ち停ると、片眼で山上に揺られている一本の蜜柑の枝を狙って矢を引いた。蜜柑の枝は、一段と闇の中で激しく揺れた。訶和郎の首は、猟人の獲物のように矢の刺った胸の上へ垂れ下った。