Japanische Klassiker mit Furigana
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にちりん
日輪・春は馬車に乗って 他八篇
横光 利一
Lesen Sie 日輪・春は馬車に乗って 他八篇 (にちりん) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.787 Zeichen · 177 Bildschirme
二日目の夕暮れ、彼らはある水の涸れた広い河の岸へ到着した。
二十七
不弥を一挙に蹂躙して以来、まだ日のたたぬ奴国の宮では、兵士たちは最早や戦争の準備をする必要がなかった。神庫の中の鋒も剣も新らしく光っていた。そうして、彼らの弓弦は張られたままにまだ一矢の音をも立ててはいなかった。しかし、王子長羅の肉体は弱っていた。彼は焦燥しながら鶴と鶏と山蟹の卵を食べ続けるかたわら、その苛立つ感情の制御しきれぬ時になると、必要なき偵察兵を矢継早やに耶馬台へ向けた。そうして、彼は兵士たちに逢うごとに、その輝いた眼を狂人のように山の彼方へ向けて、彼らにいった。
「不弥の女を奪え。奪った者を宿禰にする。」
彼の言葉を聞いた兵士たちは互にその顔を見合せて黙っていた。しかし、それと同時に彼らの野心は、その沈黙の中で互に彼らを敵となして睨み合せた。
数日の後、長羅の顔は蒼白く痩せたままに輝き出した。そうして、逞ましく前に蹲んだ彼の長躯は、駿馬のように兵士たちの間を馳け廻っていた。出陣の用意は整った。長羅の正しく突がった鼻と、馬の鼻とは真直に耶馬台を睨んで進んでいった。数千の兵士たちは、互に敵となって塊った大集団を作りながら、声を潜めて彼の後から従った。