Japanische Klassiker mit Furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
橋の上の女 ――銭形平次傑作選2
野村 胡堂
Lesen Sie 橋の上の女 ――銭形平次傑作選2 (ぜにがたへいじとりものひかえ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 88.573 Zeichen · 178 Bildschirme
一昨日江戸を発つとき、巴屋へ押し上がって、旅の前祝いの大騒ぎをやらかし、二人の女中、お六とお梅というのを、散々からかったことは、八五郎も忘れる筈はなく、相手のお六も、品川から朝立ちで、江戸へ戻ってきた賑やかな旅人の中から、八五郎の長んがい顎を見付けたのも無理のないことでした。
「人殺しは穏かじゃねえ。誰がどうしたんだ」
「旦那が殺されたんですよ。金杉の竹松親分が乗り込んで来て、ギョロギョロ睨め廻しているから、気味が悪くて皆んな顫え上がっていますよ。八五郎親分なら、地蔵様でも縛って行って下さるわねえ」
三日前の晩の、羽目を外した騒ぎを知っているので、お六はすっかり八五郎を甘く見ている様子です。尤も、神田を発ったのは遅かったにしても、馴染があるとか何んとか、仲間の者に誘われて、高輪で宿を取ってしまい、『おいとこそうだ』に『炭坑節』『トンコ節』から『東京ブギ』の類いまで踊ったり唄ったり、あらゆる酔態を見せた一行の、オンド取りの八五郎が、お六に甘く見られたのも無理のないことでした。
このお六というのは、渡り者の大年増で、中低で盤台面の、非凡の愛嬌者で、高輪の往来――遅発の旅人の、好奇の眼を見張る中から、八五郎をしょっ引いて、巴屋の店に飛び込むほどの勇気と腕力を持っていたのです。