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Japanische Klassiker mit Furigana

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れもん

檸檬・ある心の風景 他二十編

梶井 基次郎

Lesen Sie 檸檬・ある心の風景 他二十編 (れもん) von Kajii Motojirō (梶井 基次郎) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.934 Zeichen · 263 Bildschirme

Aozora Bunko

部屋から眺めているいつもの風景は、今彼の眼前で凩に吹き曝されていた。曇空には雲が暗澹と動いていた。そしてその下に堯は、まだ電燈も来ないある家の二階は、もう戸が鎖されてあるのを見た。戸の木肌はあらわに外面に向かって曝されていた。――ある感動で堯はそこに彳んだ。傍らには彼の棲んでいる部屋がある。堯はそれをこれまでついぞ眺めたことのない新しい感情で眺めはじめた。

電燈も来ないのに早や戸じまりをした一軒の家の二階――戸のあらわな木肌は、不意に堯の心を寄辺のない旅情で染めた。

――食うものも持たない。どこに泊まるあてもない。そして日は暮れかかっているが、この他国の町は早や自分を拒んでいる。――

それが現実であるかのような暗愁が彼の心を翳っていった。またそんな記憶がかつての自分にあったような、一種訝かしい甘美な気持が堯を切なくした。

何ゆえそんな空想が起こって来るのか? 何ゆえその空想がかくも自分を悲しませ、また、かくも親しく自分を呼ぶのか? そんなことが堯には朧げにわかるように思われた。

肉を炙る香ばしい匂いが夕凍みの匂いに混じって来た。一日の仕事を終えたらしい大工のような人が、息を吐く微かな音をさせながら、堯にすれちがってすたすたと坂を登って行った。