Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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れもん

檸檬・ある心の風景 他二十編

梶井 基次郎

Lesen Sie 檸檬・ある心の風景 他二十編 (れもん) von Kajii Motojirō (梶井 基次郎) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.934 Zeichen · 263 Bildschirme

Aozora Bunko

筧の話

私は散歩に出るのに二つの路を持っていた。一つは渓に沿った街道で、もう一つは街道の傍から渓に懸った吊橋を渡って入ってゆく山径だった。街道は展望を持っていたがそんな道の性質として気が散り易かった。それに比べて山径の方は陰気ではあったが心を静かにした。どちらへ出るかはその日その日の気持が決めた。

しかし、いま私の話は静かな山径の方をえらばなければならない。

吊橋を渡ったところから径は杉林のなかへ入ってゆく。杉の梢が日を遮り、この径にはいつも冷たい湿っぽさがあった。ゴチック建築のなかを辿ってゆくときのような、犇ひしと迫って来る静寂と孤独とが感じられた。私の眼はひとりでに下へ落ちた。径の傍らには種々の実生や蘚苔、羊歯の類がはえていた。この径ではそういった矮小な自然がなんとなく親しく――彼らが陰湿な会話をはじめるお伽噺のなかでのように、眺められた。また径の縁には赤土の露出が雨滴にたたかれて、ちょうど風化作用に骨立った岩石そっくりの恰好になっているところがあった。その削り立った峰の頂にはみな一つ宛小石が載っかっていた。ここへは、しかし、日がまったく射して来ないのではなかった。