Japanische Klassiker mit Furigana
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れもん
檸檬・ある心の風景 他二十編
Lesen Sie 檸檬・ある心の風景 他二十編 (れもん) von Kajii Motojirō (梶井 基次郎) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.934 Zeichen · 263 Bildschirme
三
ある朝トタン屋根に足跡が印されてあった。
行一も水道や瓦斯のない不便さに身重の妻を痛ましく思っていた矢先で、市内に家を捜し始めた。
「大家さんが交番へ行ってくださったら、俺の管轄内に事故のあったことがないって。いつでもそんなことを言って、巡回しないらしいのよ」
大家の主婦に留守を頼んで信子も市中を歩いた。
三
ある日、空は早春を告げ知らせるような大雪を降らした。
朝、寝床のなかで行一は雪解の滴がトタン屋根を忙しくたたくのを聞いた。
窓の戸を繰ると、あらたかな日の光が部屋一杯に射し込んだ。まぶしい世界だ。厚く雪を被った百姓家の茅屋根からは蒸気が濛々とあがっていた。生まれたばかりの仔雲! 深い青空に鮮かに白く、それは美しい運動を起こしていた。彼はそれを見ていた。
「どっこいしょ、どっこいしょ」
お早うを言いにあがって来た信子は
「まあ、温かね」と言いながら、蒲団を手摺りにかけた。と、それはすぐ日向の匂いをたてはじめるのであった。
「ホーホケキョ」
「あ、鶯かしら」
雀が二羽檜葉を揺すって、転がるように青木の蔭へかくれた。
「ホーホケキョ」
口笛だ。小鳥を飼っている近くの散髪屋の小僧だと思う。