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Japanische Klassiker mit Furigana

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れもん

檸檬・ある心の風景 他二十編

梶井 基次郎

Lesen Sie 檸檬・ある心の風景 他二十編 (れもん) von Kajii Motojirō (梶井 基次郎) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.934 Zeichen · 263 Bildschirme

Aozora Bunko

一匹の痩せ衰えた犬が、霜解けの路ばたで醜い腰付を慄わせながら、糞をしようとしていた。堯はなにか露悪的な気持にじりじり迫られるのを感じながら、嫌悪に堪えたその犬の身体つきを終わるまで見ていた。長い帰りの電車のなかでも、彼はしじゅう崩壊に屈しようとする自分を堪えていた。そして電車を降りてみると、家を出るとき持って出たはずの洋傘は――彼は持っていなかった。

あてもなく電車を追おうとする眼を彼は反射的にそらせた。重い疲労を引き摺りながら、夕方の道を帰って来た。その日町へ出るとき赤いものを吐いた、それが路ばたの槿の根方にまだひっかかっていた。堯には微かな身慄いが感じられた。――吐いたときには悪いことをしたとしか思わなかったその赤い色に。――

夕方の発熱時が来ていた。冷たい汗が気味悪く腋の下を伝った。彼は袴も脱がぬ外出姿のまま凝然と部屋に坐っていた。

突然匕首のような悲しみが彼に触れた。次から次へ愛するものを失っていった母の、ときどきするとぼけたような表情を思い浮かべると、彼は静かに泣きはじめた。

夕餉をしたために階下へ下りる頃は、彼の心はもはや冷静に帰っていた。