Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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れもん

檸檬・ある心の風景 他二十編

梶井 基次郎

Lesen Sie 檸檬・ある心の風景 他二十編 (れもん) von Kajii Motojirō (梶井 基次郎) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.934 Zeichen · 263 Bildschirme

Aozora Bunko

山のおおかたを被っている杉林はむしろ日陰を誇張していた。蔭になった溪に死のような静寂を与えていた。

「まあ柿がずいぶん赤いのね」若い母が言った。

「あの遠くの柿の木を御覧なさい。まるで柿の色をした花が咲いているようでしょう」私が言った。

「そうね」

「僕はいつでもあれくらいの遠さにあるやつを花だと思って見るのです。その方がずっと美しく見えるでしょう。すると木蓮によく似た架空的な匂いまでわかるような気がするんです」

「あなたはいつでもそうね。わたしは柿はやっぱり柿の方がいいわ。食べられるんですもの」と言って母は媚かしく笑った。

「ところがあれやみんな渋柿だ。みな干柿にするんですよ」と私も笑った。

柿の傍には青々とした柚の木がもう黄色い実をのぞかせていた。それは日に熟んだ柿に比べて、眼覚めるような冷たさで私の眼を射るのだった。そのあたりはすこしばかりの平地で稲の刈り乾されてある山田。それに続いた桑畑が、晩秋蚕もすんでしまったいま、もう霜に打たれるばかりの葉を残して日に照らされていた。雑木と枯茅でおおわれた大きな山腹がその桑畑へ傾斜して来ていた。山裾に沿って細い路がついていた。