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Japanische Klassiker mit Furigana

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れもん

檸檬・ある心の風景 他二十編

梶井 基次郎

Lesen Sie 檸檬・ある心の風景 他二十編 (れもん) von Kajii Motojirō (梶井 基次郎) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.934 Zeichen · 263 Bildschirme

Aozora Bunko

梢の隙間を洩れて来る日光が、径のそこここや杉の幹へ、蝋燭で照らしたような弱い日なたを作っていた。歩いてゆく私の頭の影や肩先の影がそんななかへ現われては消えた。なかには「まさかこれまでが」と思うほど淡いのが草の葉などに染まっていた。試しに杖をあげて見るとささくれまでがはっきりと写った。

この径を知ってから間もなくの頃、ある期待のために心を緊張させながら、私はこの静けさのなかをことにしばしば歩いた。私が目ざしてゆくのは杉林の間からいつも氷室から来るような冷気が径へ通っているところだった。一本の古びた筧がその奥の小暗いなかからおりて来ていた。耳を澄まして聴くと、幽かなせせらぎの音がそのなかにきこえた。私の期待はその水音だった。

どうしたわけで私の心がそんなものに惹きつけられるのか。心がわけても静かだったある日、それを聞き澄ましていた私の耳がふとそのなかに不思議な魅惑がこもっているのを知ったのである。その後追いおいに気づいていったことなのであるが、この美しい水音を聴いていると、その辺りの風景のなかに変な錯誤が感じられて来るのであった。香もなく花も貧しいのぎ蘭がそのところどころに生えているばかりで、杉の根方はどこも暗く湿っぽかった。