Japanische Klassiker mit Furigana
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れもん
檸檬・ある心の風景 他二十編
Lesen Sie 檸檬・ある心の風景 他二十編 (れもん) von Kajii Motojirō (梶井 基次郎) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.934 Zeichen · 263 Bildschirme
休憩の時間が来たとき私は離れた席にいる友達に目せをして人びとの肩の間を屋外に出た。その時間私とその友達とは音楽に何の批評をするでもなく黙り合って煙草を吸うのだったが、いつの間にか私達の間できまりになってしまった各々の孤独ということも、その晩そのときにとっては非常に似つかわしかった。そうして黙って気を鎮めていると私は自分を捕えている強い感動が一種無感動に似た気持を伴って来ていることを感じた。煙草を出す。口にくわえる。そして静かにそれを吹かすのが、いかにも「何の変わったこともない」感じなのであった。――燈火を赤く反映している夜空も、そのなかにときどき写る青いスパークも。……しかしどこかからきこえて来た軽はずみな口笛がいまのソナタに何回も繰り返されるモティイフを吹いているのをきいたとき、私の心が鋭い嫌悪にかわるのを、私は見た。
休憩の時間を残しながら席に帰った私は、すいた会場のなかに残っている女の人の顔などをぼんやり見たりしながら、心がやっと少しずつ寛解して来たのを覚えていた。しかしやがてベルが鳴り、人びとが席に帰って、元のところへもとの頭が並んでしまうと、それも私にはわからなくなってしまうのだった。