Japanische Klassiker mit Furigana
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れもん
檸檬・ある心の風景 他二十編
Lesen Sie 檸檬・ある心の風景 他二十編 (れもん) von Kajii Motojirō (梶井 基次郎) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.934 Zeichen · 263 Bildschirme
アイスクリーム屋の声も、歌をうたう声も、なにからなにまで。
小婢の利休の音も、すぐ表ての四条通ではこんなふうには響かなかった。
喬は四条通を歩いていた何分か前の自分、――そこでは自由に物を考えていた自分、――と同じ自分をこの部屋のなかで感じていた。
「とうとうやって来た」と思った。
小婢が上って来て、部屋には便利炭の蝋が匂った。喬は満足に物が言えず、小婢の降りて行ったあとで、そんなすぐに手の裏返したようになれるかい、と思うのだった。
女はなかなか来なかった。喬は屈託した気持で、思いついたまま、勝手を知ったこの家の火の見へ上って行こうと思った。
朽ちかけた梯子をあがろうとして、眼の前の小部屋の障子が開いていた。なかには蒲団が敷いてあり、人の眼がこちらを睨んでいた。知らぬふりであがって行きながら喬は、こんな場所での気強さ、と思った。
火の見へあがると、この界隈を覆っているのは暗い甍であった。そんな間から所どころ、電燈をつけた座敷が簾越しに見えていた。レストランの高い建物が、思わぬところから頭を出していた。四条通はあすこかと思った。八坂神社の赤い門。電燈の反射をうけて仄かに姿を見せている森。