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Japanische Klassiker mit Furigana

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れもん

檸檬・ある心の風景 他二十編

梶井 基次郎

Lesen Sie 檸檬・ある心の風景 他二十編 (れもん) von Kajii Motojirō (梶井 基次郎) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.934 Zeichen · 263 Bildschirme

Aozora Bunko

「ぼくはおまえを愛している」

ふと少女はそんな囁きを風のなかに聞いた。胸がドキドキした。しかし速力が緩み、風の唸りが消え、なだらかに橇が止まる頃には、それが空耳だったという疑惑が立罩める。

「どうだったい」

晴ばれとした少年の顔からは、彼女はいずれとも決めかねた。

「もう一度」

少女は確かめたいばかりに、また汗を流して傾斜をのぼる。――首巻がはためき出した。ビュビュ、風が唸って過ぎた。胸がドキドキする。

「ぼくはおまえを愛している」

少女は溜息をついた。

「どうだったい」

「もう一度! もう一度よ」と少女は悲しい声を出した。今度こそ。今度こそ。

しかし何度試みても同じことだった。泣きそうになって少女は別れた。そして永遠に。

――二人は離ればなれの町に住むようになり、離ればなれに結婚した。――年老いても二人はその日の雪滑りを忘れなかった。――

それは行一が文学をやっている友人から聞いた話だった。

「まあいいわね」

「間違ってるかも知れないぜ」

大変なことが起こった。ある日信子は例の切り通しの坂で顛倒した。心弱さから彼女はそれを夫に秘していた。産婆の診察日に彼女は顫えた。