Japanische Klassiker mit Furigana
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れもん
檸檬・ある心の風景 他二十編
Lesen Sie 檸檬・ある心の風景 他二十編 (れもん) von Kajii Motojirō (梶井 基次郎) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.934 Zeichen · 263 Bildschirme
家の前庭はひろく砥石のように美しい。ダリヤや薔薇が縁を飾っていて、舞台のように街道から築きあげられている。田舎には珍しいダリヤや薔薇だと思って眺めている人は、そこへこの家の娘が顔を出せばもう一度驚くにちがいない。グレートヘンである。評判の美人である。彼女は前庭の日なたで繭をながら、実際グレートヘンのように糸繰車を廻していることがある。そうかと思うと小舎ほどもある枯萱を「背負枠」で背負って山から帰って来ることもある。夜になると弟を連れて温泉へやって来る。すこやかな裸体。まるで希臘の水瓶である。エマニュエル・ド・ファッリャをしてシャコンヌ舞曲を作らしめよ!
この家はこの娘のためになんとなく幸福そうに見える。一群の鶏も、数匹の白兎も、ダリヤの根方で舌を出している赤犬に至るまで。
しかし向かいの百姓家はそれにひきかえなんとなしに陰気臭い。それは東京へ出て苦学していたその家の二男が最近骨になって帰って来たからである。その青年は新聞配達夫をしていた。風邪で死んだというが肺結核だったらしい。こんな奇麗な前庭を持っている、そのうえ堂々とした筧の水溜りさえある立派な家の伜が、何故また新聞の配達夫というようなひどい労働へはいって行ったのだろう。