Japanische Klassiker mit Furigana
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れもん
檸檬・ある心の風景 他二十編
Lesen Sie 檸檬・ある心の風景 他二十編 (れもん) von Kajii Motojirō (梶井 基次郎) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.934 Zeichen · 263 Bildschirme
何をする気にもならない自分はよくぼんやり鏡や薔薇の描いてある陶器の水差しに見入っていた。心の休み場所――とは感じないまでも何か心の休まっている瞬間をそこに見出すことがあった。以前自分はよく野原などでこんな気持を経験したことがある。それはごくほのかな気持ではあったが、風に吹かれている草などを見つめているうちに、いつか自分の裡にもちょうどその草の葉のように揺れているもののあるのを感じる。それは定かなものではなかった。かすかな気配ではあったが、しかし不思議にも秋風に吹かれてさわさわ揺れている草自身の感覚というようなものを感じるのであった。酔わされたような気持で、そのあとはいつも心が清すがしいものに変わっていた。
鏡や水差しに対している自分は自然そんな経験を思い出した。あんな風に気持が転換できるといいなど思って熱心になることもあった。しかしそんなことを思う思わないに拘らず自分はよくそんなものに見入ってぼんやりしていた。冷い白い肌に一点、電燈の像を宿している可愛い水差しは、なにをする気にもならない自分にとって実際変な魅力を持っていた。二時三時が打っても自分は寝なかった。