Japanische Klassiker mit Furigana
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れもん
檸檬・ある心の風景 他二十編
Lesen Sie 檸檬・ある心の風景 他二十編 (れもん) von Kajii Motojirō (梶井 基次郎) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.934 Zeichen · 263 Bildschirme
停電して部屋が真暗になってしまうと、われわれは最初なんともいえない不快な気持になる。しかしちょっと気を変えて呑気でいてやれと思うと同時に、その暗闇は電燈の下では味わうことのできない爽やかな安息に変化してしまう。
深い闇のなかで味わうこの安息はいったいなにを意味しているのだろう。今は誰の眼からも隠れてしまった――今は巨大な闇と一如になってしまった――それがこの感情なのだろうか。
私はながい間ある山間の療養地に暮らしていた。私はそこで闇を愛することを覚えた。昼間は金毛の兎が遊んでいるように見える谿向こうの枯萱山が、夜になると黒ぐろとした畏怖に変わった。昼間気のつかなかった樹木が異形な姿を空に現わした。夜の外出には提灯を持ってゆかなければならない。月夜というものは提灯の要らない夜ということを意味するのだ。――こうした発見は都会から不意に山間へ行ったものの闇を知る第一階梯である。
私は好んで闇のなかへ出かけた。溪ぎわの大きな椎の木の下に立って遠い街道の孤独の電燈を眺めた。深い闇のなかから遠い小さな光を跳めるほど感傷的なものはないだろう。私はその光がはるばるやって来て、闇のなかの私の着物をほのかに染めているのを知った。