Japanische Klassiker mit Furigana
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れもん
檸檬・ある心の風景 他二十編
Lesen Sie 檸檬・ある心の風景 他二十編 (れもん) von Kajii Motojirō (梶井 基次郎) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.934 Zeichen · 263 Bildschirme
幾たびも飛び出す樫鳥は、そんな私を、近くで見る大きな姿で脅かしながら、葉の落ちた欅や楢の枝を匍うように渡って行った。
最後にとうとう谿が姿をあらわした。杉の秀が細胞のように密生している遙かな谿! なんというそれは巨大な谿だったろう。遠靄のなかには音もきこえない水も動かない滝が小さく小さく懸っていた。眩暈を感じさせるような谿底には丸太を組んだ橇道が寒ざむと白く匍っていた。日は谿向こうの尾根へ沈んだところであった。水を打ったような静けさがいまこの谿を領していた。何も動かず何も聴こえないのである。その静けさはひょっと夢かと思うような谿の眺めになおさら夢のような感じを与えていた。
「ここでこのまま日の暮れるまで坐っているということは、なんという豪奢な心細さだろう」と私は思った。「宿では夕飯の用意が何も知らずに待っている。そして俺は今夜はどうなるかわからない」
私は私の置き去りにして来た憂鬱な部屋を思い浮かべた。そこでは私は夕餉の時分きまって発熱に苦しむのである。私は着物ぐるみ寝床へ這入っている。それでもまだ寒い。悪寒に慄えながら秋の頭は何度も浴槽を想像する。