Japanische Klassiker mit Furigana
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ひとうとうこうき
比島投降記
石川 欣一
Lesen Sie 比島投降記 (ひとうとうこうき) von 石川 欣一 (いしかわきんいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 68.333 Zeichen · 134 Bildschirme
病死者もほとんど無く、アパリのストケードには平穏な日が続いた。喧嘩口論などは、ただの一回も起らず、米軍側の命令はよく徹底した。G中尉は万事を僕にまかせた。僕はこの信任を裏切らなかった。これは天地神明に向って、大威張でいえることである。ある時の如き、G中尉は僕に向って「自分はこのストケードのほかに、米国兵の営倉も受持っている。そこには酔っぱらい常習の兵が一人入っているが、兵隊が三人自分の下で働いている。ここには三千人もいるが、ここの方がよっぽど世話がやけない」といった。
この平穏をかき乱したのは、時々やって来る颱風である。猛烈な雨を伴い気温もまた下る。そんな時我々は褌まで濡らして、天幕の縄をしめ、杭を打ちこむのであった。しかし、海岸の病院とは違って、前にも書いたように堤防があるので、海水が入って来る心配はなく、下は草の生えた砂地なので水はけもよかった。それに、何より有難いのは、雨水で行水をつかったり、洗濯をしたりしたことである。ここでも天気のいい日には海水浴をしたが、どうも塩水ではサッパリしないし、それにこの海岸に近く、悪い底流があって、ちょっと危険なので、女や子供は海に入ることを躊躇していた。