Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme

Aozora Bunko

一切の国政をみな家臣にまかせて、光風霽月を友とし、九年の間も、この高楼から降りないせいか、老公の耳朶、眦には、童顔のうちに一種の仙味がある。

が――ただ眸には、何か一つ、言うに言えないような憂いが底を流れていた。

「時に、郷左」

「はっ」

「今年もはや二月になるのう」

「御意にござりまする」

「数えておるか」

「胸にこたえておりまする」

「幕府のご猶予は秋までだぞよ。この秋までに、世継を届け出ねば、わしの家名は、幕府へご返上せねばならん。永劫に、わしの血統というものは、この地上に絶えるのだ」

「郷左も、その儀ばかりを、実に心痛いたしておりまする。ひとたび、思いをそこにいたす時は、夜の眼もろくに眠られませぬ」

「まったくか!」

「何で、私が」

「いつもいつも、汝は左様申してはおるが」

と、老公は幅のひろい声量に少し怒りをふくんで、

「待てど暮せど、いまだに、身の落胤の行方について、さらに手懸りがつかぬのはどうしたものじゃ」

「いや」

と、郷左衛門はあわてて、恐懼そのものとなった手を振りながら、

「大殿が左様にお思い遊ばすのは、ご無理ではございませぬが、それに係っておる者は、誰も彼も、寝食を忘れ、身を粉にくだいてご落胤のお四名様を、探し歩いておりまする。