Japanische Klassiker mit Furigana
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ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme
決して、一日たりと、それを忘れている臣下はございませぬ」
「わしの血をうけている四人の孫、それは正しい側室の血統でないために、いずれも民間に流離しておるであろうが、一国の主の力をもって、数年間も探し求めて、いやいまだに一人もわからぬという法はない」
「おことば、重々ご尤もでござりますが、ほかならぬお世襲の問題、幕府や他藩へ対しても、公にはできませぬ」
「あたりまえじゃ」
「が故に、ずいぶん手配は尽しておりまするが、ご勢力をもって、大がかりにお探しはできぬのであります。何とぞ、この郷左をお信じあって、もうしばらくの間、おまかせ下さいませ。はい! お四名様のうち、きっとお一人やお二人は、郷左が命にかけてもご期限までに探し出して、お心を安め奉ります」
彼が、声にまごころをこめ、眼に涙をうかめて、こうまでに言うと、時折、歯がゆくなられるらしい老公もだんだん顔いろを和らげて、やがては、臣下にせよ、信じてこそ国家老の重職においてある彼へ向って言い過ぎたことばを、悔ゆる色さえあらわして来るのだった。
「郷左、何分にもたのむぞ」
老公は、そう繰り返して、峰の夕雲に眼を移した。