Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme

Aozora Bunko

「失言じゃ、ゆるせ。おまえの侠気はよくわかっておる。――して、女は、どこへ連れて来た」

「近所の眼がうるそうございますから、舟底に縛りつけて、帆をかぶせておきました」

「ヤ、ヤ! それやいかん! それやいかん」

老先生は、愕然として立ち上がった。

舟辰は、怪訝な顔をして、

「なぜいけねえんですか」

「あの女には、たえず、覆面の首領の眼がついているはずだ。一刻たりと、見張を抜いたのは大きな手ぬかり。或いはもう遅いかも知れんぞ」

まさか――と舟辰は多寡をくくっていたが、老先生があまりにくやむので、あわてて、草履を突ッかけて、河岸の桟橋へ駈け出してみた。

舟は、そのまま、繋いであった。

帆布も、そのままかぶせてあった。

――だが、それを剥くッて見たとたんに、舟辰は、あっといったきり、開いた口がふさがらなかった。

玉枝のすがたは、魔術師の籠にはいった鳩のように、きれいに、消されてしまっていた。

「ど、どうしたんだろう」

「すこしも、不思議はない」

老先生は、がっしりと、腕を拱んで、鼻腔からふとい息を吐いた。

「……惜しいことをした」

「なんとも、相済みません」

「あやまることはない。