Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme
あとで、心静かに、書き認めてお手元までさし出しまする」
「ム。それでよい。それで結構だよ。……ところで、ついでのことじゃ。もう一つ、わしの問いに答えてくれるか」
「はい、どんなことでも、もう決して包み隠しはいたしません」
「おう、よい嫁じゃ」
と、老先生は、眼の中へでも入れてしまいたいような愛撫を眸の奥にたたえながら、彼女の左の手首をかろく取り上げて、
「ほかではないが、そなたのこの爪だ。薬指の真っ黒なこの爪の色だ……。これはいったい、生れつきか、それとも、幼い時に怪我でもしてこうなったのか。婦女子の爪紅をさしたのはいくらも見かけるが、こんな烏の嘴みたいな黒い爪は見たことがない。何ぞ仔細があるのであろう、それを、話してもらいたい」
「…………」
花世は、羞恥にわななきながら、じっと、その手を、そのままにしていた。白い頸を、折れた百合みたいに、垂れていた。
老先生には、彼女の心臓の音が、ありありと聞えた。
「……どうじゃな、花世」
「…………」
「もし、これも、口で言いにくければ、前の問題といっしょに、書いて見せてくれてもよいが」
「こればかりは、死んだ実父の五百之進も、胸を痛めていたことでござりますが、遅からず、一度はお打ち明けせねばならぬこと。