Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ろうごくのはなよめ

牢獄の花嫁

吉川 英治

Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme

Aozora Bunko

あとで、詳しく書いておきまする」

「これで、だんだんに、夜明けが近づいてくるような気がする」

「私の、こんな、恥しい爪の事などが、何か、事件のお役に立つのでございますか」

「立つどころか、秘密を開く鍵になる。その代りに、気をつけぬと、その爪のために、一命を縮めることもあろう」

「まあ? ……」

と花世は、不思議そうに、自分の薬指を握ってみた。生みつけられた宿命の指を、改めて、見つめるのだった。

「たしか、その黒い爪を持つ女が、そなたのほかにも、この世に、幾人かおるのではないか」

と、老先生は、呟くように言った。

「はい、私を入れて、四人はいるはずでございます」

「ウム、とにかく早速、今訊ねた二つの問の答えを、書いてくれんか」

「では、ちょっと、お待ち下さいませ」

と、花世は、立ち上がって、少し丘になっているそこの墓地から、寺の方丈の方へ向って、小走りに、駈け降りて行った。

と――その後ろ姿を見送っていた老先生の眼のさきを、きらりと、星のような、白い光が、横切って行った。

「あっ、小柄だ!」

老先生は、絶叫した。

とたんに、その鋭利な手裡剣の飛んで行った墓地の下で、キャッと、人間の最期を告げる異様な絶鳴が、静寂を破った。