Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Lesen Sie 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 162.213 Zeichen · 325 Bildschirme
「ううむ……ここまでふかく計っていたのか」
羅門は、絶望の闇へ、どっかりと観念の腰をすえた。そして、ぎゅッと、無念そうに噛んだ唇から、たらたらと、血の糸がたれた。
「もう、これまでだ」
「恐れ入ったか」
「勝手にしろ」
眼を閉じて、無言。呼吸は大きく、肩に波を打っている。硬ばった顔の筋だけが、青白い蚯蚓のように、ぴくぴくと、うごいていた。
勝手にしろ! 何というふてくされた、悪覚らしい一言だろう。それが悪人のすべてを終局にした最後の声だった。
老先生も、ずいぶん悪人は手にかけたが、こんな不敵な曲者はまだ見たことがない。呆れたように、彼の態度を眺めていた。
無言と無言――
もう何をいう余地もない。正邪、明らかである。これ以上追及はいらない。と――老先生が眼を反らしかけると、突然、しゅくッと、男泣きの声が、足もとで聞えた。
「老先生! 慚愧にたえません! 事ここに至っては何事も及ばないことですが、羅門塔十郎、今初めて、多年の迷夢がさめました」
裾にすがって、言うのであった。
ああ、かほどな悪人も、遂に、性は善であったかと、老先生は憎いうちにも、ふと、哀れを感じた。