Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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がらすどのうち

硝子戸の中

夏目 漱石

Lesen Sie 硝子戸の中 (がらすどのうち) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 52.702 Zeichen · 105 Bildschirme

Aozora Bunko

「そんなに焚火に当ると顔が真黒になるよ」と云ったら、末の子が、「いやあーだ」と答えた。私は石垣の上から遠くに見える屋根瓦の融けつくした霜に濡れて、朝日にきらつく色を眺めたあと、また家の中へ引き返した。

親類の子が来て掃除をしている書斎の整頓するのを待って、私は机を縁側に持ち出した。そこで日当りの好い欄干に身を靠たせたり、頬杖を突いて考えたり、またしばらくはじっと動かずにただ魂を自由に遊ばせておいてみたりした。

軽い風が時々鉢植の九花蘭の長い葉を動かしにきた。庭木の中で鶯が折々下手な囀りを聴かせた。毎日硝子戸の中に坐っていた私は、まだ冬だ冬だと思っているうちに、春はいつしか私の心を蕩揺し始めたのである。

私の冥想はいつまで坐っていても結晶しなかった。筆をとって書こうとすれば、書く種は無尽蔵にあるような心持もするし、あれにしようか、これにしようかと迷い出すと、もう何を書いてもつまらないのだという呑気な考も起ってきた。しばらくそこで佇ずんでいるうちに、今度は今まで書いた事が全く無意味のように思われ出した。なぜあんなものを書いたのだろうという矛盾が私を嘲弄し始めた。